TaichuAIが公開の9B規模多モーダルモデルZDTaichu5.0の空間推論とエージェント性能
30秒でわかる内容解説
中国のAI研究チームTaichuAIが、9Bパラメータ級の多モーダル基盤モデルZDTaichu5.0-9Bを公開した。Qwen3.5-9Bを言語基盤に、C-RADIOv4-Hを画像認識基盤に採用し、テキストや動画の128Kトークン処理に対応する。ローカルPCで動作するVLMの選択肢が一つ増える。空間認識やエージェント機能のベンチマーク結果は既存の同規模オープンモデルを上回る。PC環境で高度な視覚推論を試す技術者にとって実用的な選択肢となる。
言語基盤とビジョンエンコーダーの組み合わせ
2026年9月20日にHugging Faceで公開されたZDTaichu5.0-9Bは、テキスト・画像・動画を入力可能なマルチモーダル言語モデルである。言語バックボーンにQwen3.5-9Bを、ビジョンエンコーダーにC-RADIOv4-Hを組み合わせた構成だ。最大128Kトークンのコンテキスト長をサポートし、任意解像度の視覚データを取り込む。
It combines a Qwen3.5-9B language backbone with a C-RADIOv4-H vision encoder, supports text, images and videos with any-resolution visual input.
Qwen3.5-9Bの言語バックボーンとC-RADIOv4-Hのビジョンエンコーダーを組み合わせており、任意解像度の画像や動画をサポートする。
複雑なタスクに対して、潜在空間内で再帰的推論ステップを動的に割り当えるEntropy-Gated Adaptive Recurrent Reasoning(エントロピー閾値による適応型再帰推論)を採用している。計算リソースが必要なトークンにのみ追加の処理層を適用する仕組みだ。これにより、一般的な視覚理解能力を維持しつつ、空間推論や具身AIの高度な推論を可能にした。
文書や図表のOCR(光学文字認識)、視覚数学、複数画像の比較、動画のイベント追跡などに対応する。ツール実行は周囲のアプリケーションに委ねる設計で、多ステップのマルチターン操作が可能だ。
モデルウェイトはNVIDIA Open Model License Agreementで公開される。Qwen3.5の部分はApache-2.0ライセンスに従う。商用利用やローカル展開の敷居が比較的低く設定されている。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| ライセンス | NVIDIA Open Model License Agreement / Apache-2.0 |
| 推奨CUDA | 12.9以降 |
| 推奨ドライバ | 575.51.03以降 |
10B規模モデルにおける空間推論とエージェント性能
10B規模の汎用VLM(視覚言語モデル)を対象としたベンチマークでは、空間推論能力で首位を記録している。ViewSpatialで62.50、MMSI-Benchで47.20、SparBenchで51.82をマークした。左右や前後の位置関係、3Dシーンの理解、視点変換などの評価で優れている。
具身AI関連の評価でもERQAで48.00、RoboSpatialで56.00、VSI-Benchで59.69を達成した。物体の相互作用や操作計画を推測する能力が高い。エージェント機能ではTAU2-Benchで87.7、Claw-Evalで71.4を記録し、同規模モデル中最も高い数値を示した。IFEvalの指示従順性でも93.7を叩き出した。
言語推論やコーディングのテストでもAIME 2026で89.20、LiveCodeBench v6で73.40をマークした。ただし、ベンチマークスコアは発表側が独自の評価設定を採用している点に注意が必要だ。TAU2-BenchではDeepSeek-V4-Flash-0731を判定器として使用している。外部での再現性は未確認の段階である。
ローカル環境向けの推論設定とAPI公開
ローカルPCでの推論を想定した実装ガイドが提供されている。Hugging Face TransformersやvLLMの対応ブランチを用いて、Dockerまたはソースコードからのデプロイが可能だ。vLLM v0.26.0の修正版が推奨され、CUDA 12.9以降とNvidia Driver 575.51.03以上を必要とする。
OpenAI互換のREST APIエンドポイントを公開しており、既存のチャットクライアントやエージェントフレームワークとそのまま連携できる。推論時のパラメータ調整も明確で、空間推論には温度0.0、それ以外のタスクには温度1.0を推奨している。
推論出力とツール呼び出しを解析するオプションも用意されている。起動引数にreasoning-parser qwen3とenable-auto-tool-choiceを加えるだけで、Qwen3形式の思考プロセスやツール呼び出しを自動的に抽出できる。ローカル環境で高度なVLMを運用する技術者にとって、設定のハードルは低い。
ライセンス環境と今後の検証予定
資料には日本での具体的な販売や価格記載はない。ただし、ライセンスがNVIDIA Open Model License AgreementとApache-2.0に設定されているため、日本国内の技術者や企業も商用で自由に利用可能だ。
2026年9月20日公開のモデルカードには、プロジェクトページとGitHubリポジトリへのリンクが記載されている。今後、コミュニティによる微調整やローカル最適化が進むと見られる。
外部ベンチマークスコアの再現性検証や、他の評価設定での性能比較が完了次第、詳細な評価記事が更新される予定だ。特にViewSpatialやMMSI-Benchのような空間推論テストでは、出力形式の制約が加えられている点も今後の検証材料となる。
出典
- TaichuAI/ZDTaichu5.0-9B (image-text-to-text)(Hugging Face trending) · 議論