5万件の架空統計がChatGPTで7ヶ月引用され続けた実験の事実
30秒でわかる内容解説
Peec AIの研究者が2026年3月に公開した架空統計サイトStateGlobeは、Google検索から消えた後もChatGPTに引用され続けた。GPT-4.1で1日で5万件のページを生成し、約50ドル(約7,910円)で公開したこのサイトは、7ヶ月後の2026年10月現在も月間7万件のリアルタイム検索リクエストを受けている。ローカルPCでモデルを動かす技術者にとっても、検索結果の信頼性と大規模言語モデルの引用メカニズムを理解する上で示唆に富む事例である。
円換算は1ドル=158.13円(2026年10月20日、欧州中央銀行の参考レート)による概算で、日本での販売価格とは異なる。
生成コスト50ドル(約7,910円)の架空サイトが7ヶ月間参照され続けた経緯
Peec AIの研究者はドメインstateglobe.comを購入し、GPT-4.1を用いて1日で5万件の架空統計ページを生成した。SEOやコンテンツマーケティングに関する各国のデータを表示するが、数値はすべて未検証である。公開費用は約30ドル(約4,740円)で、後に1万5千件のリスト記事を追加し、合計約50ドル(約7,910円)で実験は完結した。
StateGlobeはウェブ技術やソーシャルメディアに関する200カ国の統計を掲載している。GA4のデータでは、3月以降ChatGPTからのセッションが1万件を超えている。10月7日には特定のプロンプトに対する可視性でStatistaに次ぐ2位を記録した。
公開直後はGoogle検索でも表示されたが、2度のアルゴリズム更新後に索引から消えた。その後もChatGPTはサイトを参照し続け、公開から7ヶ月後の2026年10月に確認した直近30日間のデータでは、60万件以上のボットリクエストがあった。そのうち約7万2千件がChatGPT-Userエージェントによるリアルタイム検索である。
写真では公開から7ヶ月後のCloudflareクロールデータと直近30日間で60万件以上のボットリクエストが確認できる。
下の画像はCloudflareのクロールデータを示している。大規模言語モデルの回答生成は時間とコストの制約が厳しい。システムは数ページを取得して関連する記述を抜き出し、そのまま書き始める。個別の数値を検証するコストが膨大になるため、偽の統計でも引用され続ける構造が生まれる。
AhrefsとSemrushによると、330以上の参照ドメインが存在する。ShopifyやDHL、Bluehostなどの有名ブランドが含まれる。Googleの検索順位が下がっても、AIの検索基盤は独自に候補を選別し、キャッシュからページを呼び出すため、索引から消えたサイトでも参照され続ける。写真ではAhrefsとSemrushによる参照ドメイン分析が示されている。
統計データが引用されやすい仕組みとローカル環境での最適化
大規模言語モデルは記事作成時、知識の隙間を埋めるために統計データを頻繁に検索する。プロンプトがリサーチを要求すると、モデルは統計やデータ、報告書といった修飾語付きのサブクエリを実行する。ページ全体ではなく、特定の記述が抽出されるため、1文に1つの主張を置く設計が効果的である。
数値は具体性があり、引用元に権威を持たせる。X%の従業員が週に1回以上リモートワークを行っているなど、具体的な数値は引用しやすく、文章に深みを与える。大規模言語モデルは再ランク付け器を使って関連性を評価するため、正確性ではなく一致度で選別される。
架空のサイトが学術論文やカタール最大金融グループの投資調査で使われたのもこのためである。引用が繰り返されることで偽データに信頼性が付与され、引用洗浄と呼ばれる現象が起きる。信頼性を高めるには、数値の隣にソースと西暦を記載する。
また、タイトルや見出し、URLに西暦を含めることで、モデルが最新性を判断する信号になる。ローカル環境でモデルを動かす場合、JavaScriptでデータを隠さずサーバーレンダリングしたHTMLを採用し、robots.txtでAIエージェントのクロールを許可する必要がある。
見出しはモデルが実行するファンアウトクエリに合わせる。特定のトピックの統計や市場規模、各国の導入率といった形式が有効である。デザインリソースを節約し、リスト形式を維持することで、データ取得の成功率を高める。
データ真偽に無関心なAIと循環引用による雪だるま現象
技術コミュニティでは、AIがデータの真偽に無関心である点が指摘されている。大規模言語モデル生成コンテンツの循環引用による雪だるま式の偽データ拡散が懸念され、既存のシチゼネシスや地図のトラップストリート現象のデジタル版と見なされている。Cory Doctorowの指摘通り、エージェント向けインターネットでは嘘をつくことへの報酬が存在する。電話番号を偽装する詐欺や公式アクセサリを装う偽物のように、システムを騙す手法が標準化しつつある。
A search-grounded piece of LLM-written content has a tight budget for latency and cost.
大規模言語モデルが生成する検索ベースのコンテンツは、レイテンシーとコストの制約が厳しい。
検索基盤がBingを使用している場合のランキング状況は未確認である。大規模言語モデルの学習データにこのサイトのコンテンツが取り込まれているかも判明していない。多くの意見は、LLM向けの信頼性検証機能や広告モデルの必要性を求めている。RedditやFacebookが既に情報源として使われているため、単なるURLの権威ではなく、コンテンツ自体の検証が求められる傾向が強まっている。
コミュニティの一部では、大規模言語モデルが生成したコンテンツ同士が相互に引用し合う循環構造が問題になっている。検索結果の上位に生成コンテンツのソースが表示されるケースが増加しており、モデルが自身の学習データを食べる現象も確認されている。
実データ検証の裏付けと2026年10月時点で完了した計測手法
Peec AIのGEO(ジェネラティブエンジンオプティマイゼーション)リサーチチームは2026年6月、架空データではなく実データを検証したページで同様のテストを実施した。即時に他サイトからのリンクを獲得し、統計ページが大規模言語モデルに引用されやすい手法であることが裏付けられた。Peec AIの公式ページではすべての数値を検証し、ソースを適切に引用している。統計コンテンツはリンク獲得に有効な戦略として確立された。
今後は大規模言語モデルのアップデートにより、この手法の効果が変化する可能性がある。研究者は現在、約40件の実験を並行して実施中であり、2026年10月時点で可視性ダッシュボードの設置とプロンプト追跡を完了している。今後は組織全体のGEO戦略の基盤として、継続的なテストと測定が行われる予定である。
各サイトはサーバーログやCloudflareでAIエージェントのアクティビティを監視し、GA4でchatgpt.comからの参照セッションを計測する手法が標準化されつつある。AhrefsやSemrushで新規参照ドメインを追跡し、正確な数値をクォート検索してリンクのない言及も把握する。
出典
- Publish fake stats, get cited in LLMs(Hacker News) · 議論