· 自作PC

ASUS WRX90E-SAGE SEとThreadripper PRO 9975WX搭載ワークステーションのメモリ動作

30秒でわかる内容解説

ASUS製WRX90E-SAGE SEマザーボードとAMD製Threadripper PRO 9975WXで構成されたワークステーションで、8枚挿しのDDR5メモリが想定より低い周波数で動作する現象が報告された。DIYユーザーが大容量ECCメモリを搭載する際、マザーボードのメモリコントローラ負荷によって実効速度が制限される実態が浮かび上がった。この事象は自作PCの構成選定において、メモリ容量と動作周波数のトレードオフを理解する上で直接的な参考になる。

BIOS設定と実動周波数の乖離とPOST後のフォールバック

構築されたシステムはASUS Pro WS WRX90E-SAGE SEマザーボードにThreadripper PRO 9975WXを搭載している。GPUにはNVIDIA RTX PRO 5000 48GB BLACKWELLが接続され、メモリはTEAMGROUP T-Create Masterの8本挿し192GB ECC RDIMMである。

型番CTCMD5192G6000HC32AOC01のメモリはCL32 timingsで1.40V動作のDDR5-6000を想定したが、Ubuntu上でも全8本が4800 MT/sで動作していることが確認された。

構築システムの主要パーツ仕様
パーツ仕様
マザーボードASUS Pro WS WRX90E-SAGE SE
CPUThreadripper PRO 9975WX
メモリ192GB ECC RDIMM (8×24GB)
定格周波数DDR5-6000
動作周波数DDR5-4800

BIOS画面ではターゲット周波数が6000のまま表示されるため、設定値と実動値の乖離が生じている。EXPO(メモリメーカーが推奨する動作周波数とタイミングを自動設定する機能)を有効にするとメモリ仕様は正しく検出されるものの、POST(電源投入直後に行われるハードウェア初期化処理)中のメモリトレーニングで失敗しASUS独自のセーフモードで4800にフォールバックする。

この挙動はBIOSやAGESA(AMDが提供するBIOS内ファームウェアで、プロセッサやメモリを初期化・制御する)のメモリトレーニングが不安定なためと推測される。

With all 8 RDIMM channels populated, DDR5-6000 is almost certainly not going to train reliably on WRX90.

8スロットすべてにRDIMMを装着した場合、WRX90上でDDR5-6000が確実にトレーニングされることはまずない。

当初AI Overclock TunerをAutoに設定した際、メモリ周波数を6000に固定して起動に成功していた。しかし再起動を繰り返すうちにタイミングのズレが生じ、BIOSメインページとUbuntuがともに4800 MT/sを報告する状態に移行した。

設定画面のAI Tweakerでは依然として6000MHzがTarget DRAM Frequencyとして表示されるため、ハードウェア側の周波数制限ではなくファームウェア側の判定によるものと見られる。

WRX90プラットフォームの8DIMM装着時におけるメモリコントローラ負荷

WRX90プラットフォームでは8スロットすべてにRDIMM(サーバーワークステーション向けに信頼性を高めたRegistered DIMM規格)を装着するとメモリコントローラへの負荷が劇的に増大する。このためDDR5-6000は信頼性の高いトレーニングがほぼ不可能な境界値となる。コミュニティの検証では、8DIMM装着時の実質的な安定上限はDDR5-5200または5600程度とされている。

初期動作が6000で維持されていたのは、メモリトレーニングのギリギリのラインを単発でクリアしていた状態である。その後再起動が繰り返されることで信号品質が微妙に悪化し、最終的に4800への自動フォールバックが決定したと考えられる。メモリコントローラ関連のVSOCやVDDIO、MC電圧を手動で調整していない現状では、デフォルト設定で8本挿し6000を維持するのは難しい構造だ。

8枚挿しメモリを使用するワークステーション構築では、メモリコントローラの負荷分散を考慮したチャネル構成が重要になる。WRX90はCPUのメモリコントローラが8チャネルに対応しているため、スロットへの装着順序が速度に直結する。実用上は5200から5600MT/sの範囲で設定を最適化するのが現実的な選択となる。

Level1Techsフォーラムでの検証結果と電圧設定の統一方針

Level1Techsフォーラムでは8DIMM時の周波数制限について既に知られた仕様との指摘が主流を占めている。6400MT/sを目標にしていたユーザーも事前の報告に感謝し、構成変更の参考にした。電圧設定の統一についてVDD_11_S3(待機時電圧)をVDDやVDDQ(メモリ本体電圧)と同じ1.35Vに合わせると安定するとの補足意見がある。

メモリ容量を倍増させる場合、マザーボードのDIMMスロット配置とCPUのメモリチャネル構成を事前に確認する必要がある。自作PCユーザーは大容量メモリを積む際、動作周波数の実測値を重視する傾向が強まっている。電圧設定を統一する補足意見がある。これらの情報を基に、メモリトレーニングが成功する電圧範囲を特定する作業が進められている。

ZenTimingsを用いた電圧確認画像では、VDD_11_S3とVDD/VDDQの値を一致させる設定例が提示されている。この設定によりセーフモードへの遷移が抑制され、安定した動作周波数を維持できる可能性がある。ユーザーは設定値を比較しながら最適な電圧カーブを探っている。

BIOS更新と電圧最適化による次世代の安定動作目標

現在のBIOS 1317およびAGESA ComboSP6PI 1.0.0.1において、メモリトレーニングの精度が向上する可能性がある。電圧設定を最適化すれば5200から5600MT/sの安定動作が期待できる。8枚挿しメモリを使用するワークステーション構築では、6000MT/sを基準にせず5600MT/sを目標周波数に設定するのが安全策となる。

次世代マザーボードの発売やファームウェア更新に伴い、8DIMM時の周波数上限がどう推移するか引き続き検証される。2026年9月26日に報告された事象をきっかけに、WRX90プラットフォームのメモリ動作仕様についてユーザー間で情報共有が本格化している。

今後のBIOSアップデートではメモリトレーニングアルゴリズムの改善が期待される。VSOCやVDDIOなどの電圧値をマニュアルで調整する手法が定着すれば、さらに高周波数帯での運用も可能になる。2026年9月末以降のAGESAマイナーアップデート次第で、8本挿しDDR5の安定上限が再定義される見込みだ。

用語の注釈

AGESA
AMDが提供するBIOS内ファームウェアで、プロセッサやメモリを初期化・制御する。(参考:AMD AGESAのアップデートに注目すべき理由 - CORSAIR)

出典