液状金属TIMの2年放置実験で判明した銅との化学反応と冷却性能の推移
20秒でわかる内容解説
YouTuberのder8auer氏は、Thermal Grizzly製の液状金属TIMを2年間真空保存したサンプルを電子顕微鏡で観察した。放置後も乾燥せず、ガリウムが銅と化学反応して固体化合物化していることが確認された。自作PCユーザーは冷却性能の向上に期待しつつ、放熱器材質や価格変動による使用環境の変化を理解する必要がある。
円換算は1ユーロ=177.82円、1ドル=158.02円(2026年10月16日、欧州中央銀行の参考レート)による概算で、日本での販売価格とは異なる。
銅とメッキ加工材での反応層の差異
液状金属TIM(熱伝導材)は室温で液体だが、銅製放熱器と接触すると直ちに化学反応を開始する。ガリウムが銅と結合してCuGa2を生成し、表面は固体のように見える。ガリウム・インジウム・スズ混合合金の融点は11度である。
純ガリウムの場合は銅板間(70℃)で約4ミクロンが96時間で成長する。電子顕微鏡での観察は合計2年間にわたって行われ、2ヶ月時点では結晶が全面に広がっていたが、その後は変化が止まった。写真では真空保存された2年経過した液状金属TIMサンプルの電子顕微鏡観察結果が示されている。
生成した化合物層の熱伝導率は約100W/mKであり、無加工銅の約400W/mKと比べて約4分の1に低下する。しかし、放熱器表面にニッケルメッキを施すと反応層は1から5ミクロンに抑えられる。ニッケルは銅を保護し、ガリウムの吸収量を大幅に減らすため、実用上はメッキ加工品との相性が最も優れている。
| 材質 | 反応層の厚み | 熱伝導率への影響 |
|---|---|---|
| 銅 | 50〜100ミクロン | 約4分の1に低下 |
| ニッケルメッキ | 1〜5ミクロン | 銅を保護し吸収を抑制 |
アルミニウム製放熱器では、液状金属は5分で表面が膨張し、30分で脆化する。この性質は長年知られているが、銅やステンレス製のブロックを使用する自作PC環境では、反応層の厚み管理が冷却効率を保つ鍵となる。真空または窒素封入ボックス内での保管により、酸化による影響は回避できる。
CuGa2は約254度まで固体を維持するため、通常の使用温度では再び溶けることはない。残った液状金属の除去は難易度が高く、表面張力を下げる界面活性剤を含む研磨剤を使う必要がある。純銅表面の付着物は、専用研磨剤で約1時間で除去できることが実証されている。Thermal Grizzlyの専用ペーストは30グラムで22.11ドル(約3,490円)であり、マイクロファイバー布と研磨ペンが含まれる。
ガリウム価格の高騰と供給環境
冷却性能の向上が求められるRTX 5090やRTX 5080などの高発熱部品の普及に伴い、インターフェース部分の冷却ボトルネックが深刻化している。これらのチップは旧世代と比べて表面積あたりの発熱が2倍から3倍に増加しており、液状金属の導入が必須になりつつある。
8800 GTXと比較すると現在のGPUは放熱面積あたりの熱密度が大幅に上昇している。材料コストの推移を見ると、ガリウムの価格は5年間で約10倍に高騰している。2025年初頭から既に倍以上に値上がりし、現在の調達価格は1キログラムあたり2,500から3,000ユーロ(約53万3,000円)に達する。この価格変動は自作PCパーツの予算計画にも直接影響を与える。
After a total of two years, this honestly did not change further,
2年間経過しても、これは正直これ以上変化しなかった。
供給面では、中国が世界生産量の99%を支配している。米国向け輸出禁止措置は2026年11月27日まで一時停止中であり、その後も輸出ライセンスが引き続き必要となる。安定供給を確保するには、素材価格の変動リスクを織り込む必要がある。der8auer氏が運営する企業は、素材調達コストの増大を直接受けている。
冷却性能と設置リスクの評価分岐
液状金属の冷却性能は高いが、設置時の漏れや熱サイクルによる基板破損を恐れるユーザーも少なくない。熱膨張の繰り返しで液状金属がダムやシーラーの背後へ押し出され、隣接する導電部品と接触して短絡するリスクが存在する。ハードウェアが高価になるほど、このリスクは無視できなくなる。写真では液状金属の化学反応を解説する動画のサムネイル画像がある。
一方、グラフェンシートを推奨する層も定着している。シートの設置は簡単で汚れにくく、液状金属と比べて3から4度程度冷却性能が劣るものの、価格バランスに優れる。実際の運用例では、液状金属適用時のピーク温度86.1度に対し、グラフェンシート導入で80.3度まで低下させたケースも報告されている。
With hardware prices what they are now, it is an even bigger investment you risk for what?
ハードウェア価格が現在の水準にある今、何のためにこれほど大きな投資リスクを取るのか。
2018年から使用されたAqua Computer製ブロックの洗浄例では、専用液で約1時間かけて残留物を除去した。専門知識を要する液状金属は、手動オーバークロックを行う上級者向けの傾向が強まっている。自作PCユーザーは、自身の冷却環境とメンテナンス頻度に合わせて、液状金属かグラフェンシートかを選択する流れが明確になっている。
新コーティング開発と次期製品計画
放熱器材質の進化として、Thermal Grizzlyは銅と直接反応しない新コーティングの開発を進めている。同社はニッケルメッキに代わる仕様を、おそらく来年実装する計画だ。新素材が反応層の厚みをさらに抑制できれば、冷却性能の維持とメンテナンス性の両立が図れる可能性がある。
同時に、裸のダイ直結に対応した新型グラフェンパッドの発売も控えている。液状金属の設置ミスを減らすため、パッド形式の普及が加速する見込みである。専用研磨剤は30グラムで22.11ドル(約3,490円)であり、冷却材の選択肢が広がるにつれて周辺コストも変動する。
界面活性剤はガリウムの表面張力を低下させ、付着した金属から剥がれやすくする作用を持つ。2026年11月27日を境に中国のガリウム輸出規制が再開する。
用語の注釈
- TIM
- 放熱部品とチップ部品の間に挟み、熱の通り道を良くして冷却効率を高める材料である。(参考:熱界面材料(TIM) | 電子材料 | 日本ゼオン株式会社)
- surfactant
- 2つの物質の界面に働き、境界面の性質を変える物質である。液状金属の広がり制御に利用される。(参考:界面活性剤 / surface-active agent, surfactant - Chem-Station ...)